本を読むと、非常に常識的なことが書いてあることが多くある。その常識的なことにハッとしたり面白いなと思う。以下、なんとなく読んだ一説。

 

『私たちは倫理の不合理を批判することはできる。が、合理的な倫理などというものは、いつの時代にもあったためしはない』

(福田 恒存 『人間 この劇的なるもの』 105項)

 

 

倫理は非合理的で無根拠なものだ。例えば、『物を盗んではいけない』という決まりがあるとする。ある人々にとっては物を盗むことは秩序を乱し、自分達の生活を阻害し、非合理的なものである。しかし、また他のある人々にとっては生活のための非常に合理的な手段かもしれない。倫理を主張する側からは非常に非合理的なものでも、ある側からは非常に合理的だったりするということは、やっぱり不合理的なものなんだろう。

自分が生きている現実世界を構成しているフレームワークが不合理的なものなのだろう。人間の生きるためのシステムは自然に反するものが大多数なので不常識的で不合理的なものであるし、だからといってそれらすべてが悪いわけではないだろう。自分が今生きているのもその不合理的なシステムに依拠しているおかげでもある。